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7月5日付 池澤夏樹氏の朝日新聞夕刊のコラム

今日は社会派日記。
7月5日(火)の朝日新聞の夕刊に池澤さんの「終わりと始まり」という
定期的に書かれているコラムに、我が意を得たり!ということがかかれて
いました。朝刊を開くたびに、テレビのニュースを観るたびに、そして
あちこちで、なんとも虚しい気分になることが多かった中、このコラムに
救われました。共感してくださいとは、申しませんが、多分この記事を
読んで、私と同じように救われる人も居るのではないかと思い、ここに
転載します。長文ですが、きっと、頭の整理になると思います~。


以下、朝日新聞7月5日付夕刊 池澤夏樹氏「終わりと始まり」より転載


政治というもの、原理はわかっているつもりだ。
大は国家や国際機関から小は従業員数名の会社まで、
複数の人から成る共同体では誰かが代表となって
運営の方針を決めなければならない。その方針は
参加者みんなの総意を反映することが望ましい。

しかし人が十人いれば意見は十通りある。大人数なら
必ず党派ないし派閥ができる。意見を整理して総意を
まとめるプロセスが必要になる。そのプロセスのこと
を政治と呼ぶ。

代表に圧倒的な権力があれば政治は容易だろう。
多数の支持でその座に就いたのでもいいし、暴力で
それを得たのでもいい。ともかく反対意見を力で
封じて共同体を一定の方向に進めることができる。
(例として隆盛期のナチス・ドイツを挙げておこう)。

強力な指導者がいないと、政治の場は乱戦となる。
決定的な力を持たない指導者たちがボールを奪い合う。
審判はいるのかいないのか。国家レベルの政治の場合
混迷はいよいよ深くなって、時にはゴール・ポストが
逃げたりして、行く先はなかなか見えない。

菅直人の政府が迷走しているとメディアが伝える。
彼の性格に対する攻撃もずいぶん激しい。会ったことは
ないが、ひょっとしたら友人にしたくないような人なの
かもしれない。

明らかなのは、彼には圧倒的な支持はないということだ。
最盛期の小泉政権のような安定は望むべくもない。
さまざまな力が彼を首相の座から降ろそうとしている。
ポスト小泉の小型の首相たちはみな政権を投げだしたと
いうので批判された。今、菅首相は政権にしがみついて
いると批判されている。

政治はまず力である。産業界の求めるものと環境問題に
関心のある市民の求めるものは違う。その間で何らかの
結論を出さなければならない。互いに理性的に説得し合う
のは無理だから、露骨なパワーのバトルになる。見ていて
おもしろいからメディアは詳細に伝える。

外から見ればゲームだ。
名を成す政治家の多くはゲームに強い。発言のスタイルで
大衆の人気を博するタイプもいるし(例えば小泉淳一郎や
石原慎太郎)、裏からの工作で多くの議員をまとめて強い
派閥を作る者もいる(例えば小沢一郎)。

正直に言えと、ぼくはこの種のゲームに関心がない。勝敗の
行方を追うのはおもしろいとしても、国家は個人の資質に
よって左右されるにはあまりにも大きい。王政は暗愚な王が
出た時が悲惨だから消えたのではなかったか。

首相の性格はどうでもいい。政策だけで政治を見よう。

小泉政権がしたことはぼくは評価しない。生活保護世帯の
増加などで明らかなように、日本は所得格差が広まって
住みにくい国になった。

今、菅首相は「再生可能エネルギー特別措置法案」を
通そうとしている。この問題への彼の姿勢は一貫している。
初当選した翌々年の1982年に、衆院科学技術委員会で
再生可能エネルギーの普及を訴えた。

今回も5月6日には浜岡原発の停止を中部電力に申し入れ
10日には政府のエネルギー計画を白紙とした。送電事業を
電力会社から独立させる「発送電分離」に言及し、26日の
G8サミットでは一千万戸の家にソーラー・パネルを置くと
いう構想を発表した。

ぼくはどれにも賛成する。

その上であまり勘ぐりたくないと思いながら、この「政局の
混乱」というのは要するに、電力政策の転換への抵抗が理由
なのではないかと考える。主体は産業界、経済産業省、自民党
ならびに民主党の一部であるのだろう。

これはあまりに単純化した図式だ。すべてを敵と味方に分ける
のはまるでジョージ・ブッシュの世界観だと自分でも笑って
しまう。しかし、そう見ると納得できる部分があるのも確か
だし・・・などと思いは揺れるのだ。

このゲームにはメディアも参加している。週刊誌の見出しは
創意工夫の限りを尽くして菅直人の悪口を書いている。
悪辣で狡猾な人物だと言う。

しかし、悪辣で狡猾だろうがなかろうが、それはどうでも
いいのだ。彼には失策も多々あるだろう。溜飲を下げたいの
ならペテン師とでも何でも呼ぶがいい(ただし投げた泥は
自分にも返る)。

今、菅直人には罵詈雑言に耐えて電力政策の転換の基礎を
作ってほしい。策謀が必要ならそれも使い、とんでもない
人事も実行し、ぎりぎりまで居座り、改革を一歩進めてほしい。

なぜならば、福島の惨状を見れば明らかなとおり、原発には
未来はないからだ。ドイツとスイスとイタリアに次いで、
原子力からの賢明な撤退を選ぼう。

以上、転載ここまで。
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